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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Sigfrid Karg-Elert: Suite pointillistique, op.135
◈Sigfrid Karg-Elert: Sinfonische Kanzone, op.114
Verena Bosshart (Fl)
Stefani Fahrni (Pf)
(Rec. 1993, Radio Studio, Bern)
◈Sigfrid Karg-Elert: Sonata for violoncello and piano in A major, op.71
Walter Grimmer (Vc)
Stefan Fahrni (Pf)
(Rec. 1993, Radio Studio, Bern)
◈Sigfrid Karg-Elert: Kleine Sonata for violin and piano in C major, op.68
Hansheinz Schneeberger (Vn)
Stefan Fahrni (Pf)
(Rec. 1993, Radio Studio, Bern)



ドイツの作曲家、ジークフリート・カルク=エーレルト(Sigfrid Karg-Elert, 1877-1933)は、出生時からジークフリート・テオドール・カルク(Siegfried Theodor Karg)を名乗っていましたが、1902年に音楽家として活動をはじめた時に母親の姓を付け加え、さらにエドヴァルト・グリーグに作曲家としての活動を激励されたことから、ジークフリートの綴りをノルウェー式に書き改めて、現在の名前に落ち着きました。
エミール・ニクラウス・フォン・レズニチェック、ザロモン・ヤーダスゾーン、カール・ライネッケ、アルフレッド・ラウゼナウアー、ロベルト・タイヒミュラーの各氏の薫陶を受けたカルク=エーレルトは、作曲家兼鍵盤楽器奏者として音楽家としての経歴をはじめましたが、1904年に出版商のカール・ジモンを通じてハルモニウムを知り、ハルモニウムのための作品を多数書き残しました。
今日では、彼の名前はハルモニウムの作品を通じて記憶されていますが、様々なジャンルに作品を残しており、19世紀末から20世紀初頭までの音楽的過渡期を知る上で、彼の作品の全容解明は、価値のある作業と見做されるようになってきています。

《点描派風の組曲》(1919年作)は、アルトゥール・ニキシュに献呈されたピアノとフルートのための作品。
曲は〈アラベスク風に〉(Im stile einer Arabeske)と書かれた第1曲、〈病める月〉(Der Kranke Mond)と書かれた第2曲、〈魔女と純潔〉(Diavolina und Innocenz)と書かれたスケルツォ的な第3曲、〈神話の様式で〉(Im stile einer Hymne)と書かれた第4曲からなります。
カルク=エーレルトは、元々ライネッケらの薫陶を受けたことから、ロベルト・シューマンらドイツ・ロマンティークの作曲家たちの影響から作風を発展させた人ですが、リヒャルト・ヴァーグナーやクロード・ドビュッシー、アレクサンドル・スクリャービンなど、彼と同時代を生きた作曲家の作風を貪欲に取り入れ、独自の作風を確立しようとしました。この作品にも、そうした彼の熱心な研究心を覗かせており、第2曲では、アルノルト・シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》(1912年作)の影響が認められます。
ミステリアスな第4曲目なども、ドビュッシーやスクリャービンの風味を嗅ぎ取ることができるでしょう。彼の作品が、半音階的な和声進行を進展させて、調性が瓦解する一歩手前まで到達していたことが、この第4曲からも窺うことができます。

ピアノとフルートのための《交響的なカンツォーネ》(1917年作)は、ヨス・ウェーバー=カッセルという、カルク=エーレルトの娘婿に献呈された、10分弱の作品。
メロディ・ラインこそメロディアスですが、伴奏のハーモニーは、ヴァーグナーのような半音階進行を多用し、一筋縄ではいかない作品に仕上がっています。職人芸としての作曲技法を味わう作品だと言えるでしょう。

3楽章から成るチェロ・ソナタ(1907-1908年作)は、ミュンヘン在住のチェリストであるヨーゼフ・ディスクレーズのために書いた作品。ディスクレーズの超絶技巧が映えるように書かれていますが、新しいハーモニーを模索中といった感じで、パウル・ヒンデミットの音楽の出来そこないに終始しています。思わせぶりなモチーフが浮かんでは消える作品なので、結局何をテーマにしたいのかがつかみにくい作品ですが、その身ぶりの雄弁さで聴き手を引き込む魅力も備えています。19世紀末から20世紀初頭にかけての音楽的混沌を体現した面白い作品です。

本CDの最後に収録されている、ヴァイオリンとピアノのための小さなソナタ(1914年作)は、ドロレス・マースというベルリン在住のヴァイオリニストのために書いた作品。ソナチネというには、少々規模が大きく、ソナタというには、単一楽章なので決まりが悪かったというところでしょうか。作曲者自身は、曲の前半と後半をさらに半分づつに分けた4つのグループの重積として曲を解釈するように示唆していますが、要するに、ソナタ形式を複雑に込み入らせ、雄弁な第1主題を主に展開する部分としっとりとした第二主題を主に展開する部分を合わせて前半にし、それぞれの主題展開を後半のスケルツォ的な部分に入れ、主題回帰をさせて終わるような構造にしています。
対位法的な堅牢さといい加減さが同居したような不思議な作品ですが、これが、汎ヨーロッパ的にいろんな語法を吸収しようとしたカルク=エーレルトの到達とした一つの様式なのかもしれません。

演奏は、みんなスイス出身の演奏者たちで、フルートをヴェレーナ・ボスハルト(Verena Bosshart)、チェロをヴァルター・グリンマー(Walter Grimmer)、ヴァイオリンをハンスハインツ・シュネーベルガー(Hansheinz Schneeberger, 1926-)、ピアノをステファン・ファールニ(Stefan Fahrni)が担当しています。

ボスハルトは、ミシェル・デボスト門下のフルーティストで、ビール音楽院のフルート科教授を務めています。
本CDの点描派風の組曲では、柔らかな物腰ながら、しっかりとした作品の手応えを感じさせ、第4曲では官能的な節回しを聴かせます。
グリンマーはモーリス・ジャンドロンの教えを受けたチェリストで、ヴィトルド・ルトスワフスキや尹伊桑の作品をスイスに紹介しました。チューリヒ音楽院の教授として、多くの後進を育てていることでも知られています。
このカルク=エーレルトのチェロ・ソナタは、なかなか捉え所のない作品ながら、単に雄弁さで押し切るのではなく、第2楽章では侘び寂びを感じさせ、幅広い表現力で、作品の本質に肉薄しています。
シュネーベルガーは、ベルン音楽院でヴァルター・ケギに学んだあと、カール・フレッシュとボリス・カメンスキーの薫陶を受けたヴァイオリニストです。ベーラ・バルトークのヴァイオリン協奏曲第1番やフランク・マルタンのヴァイオリン協奏曲の初演も手掛けました。
小さなソナタの演奏においても、作品に内包するさまざまな主題のキャラクターを捉え、複雑な作品を明快に描き分けており、その演奏解釈に抜かりはありません。
一連の室内楽で伴奏を受け持つファールニは、ベルン音楽院でミシェル・ステューダーに、ロンドンでジェレミー・シープマンらの薫陶を受けたピアニストで、グリンマーらとの室内楽の演奏で高い評価を受けています。
これらの作品の伴奏は、カルク=エーレルト自身が卓越したピアニストだったこともあって、ソリスト並みのテクニックが要求されますが、それを苦にすることなく、ソリストの名技を発揮させるための土台をガッチリと作っています。
グリンマーと共演したチェロ・ソナタなど、イニシアチブを取り合うかのようなスリルを感じさせますが、ボスハルトと共演した《交響的なカンツォーネ》では、フルートの音色に合わせてふんわりとした伴奏で夢心地の音楽も作り上げています。

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