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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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CD1:
Johann Sebastian Bach: Suite No.1 in G major, BWV1007
Johann Sebastian Bach: Suite No.2 in D minor, BWV1008
Johann Sebastian Bach: Suite No.3 in C major, BWV1009
Julius Berger (Vc.)
(Rec. 11, 12, 14 April 1995, 12 May 1995, 26 September 1995, 13 March 1996, San Vigilio, Col San Martino)

CD2:
Johann Sebastian Bach: Suite No.4 in E-flat major, BWV1010
Johann Sebastian Bach: Suite No.5 in C minor, BWV1011
Johann Sebastian Bach: Suite No.6 in D major, BWV1012
Julius Berger (Vc.)
(Rec. 11, 12, 14 April 1995, 12 May 1995, 26 September 1995, 13 March 1996, San Vigilio, Col San Martino)








コンテンポラリーな音楽を専門的に扱うWergoレーベルは、時折19世紀以前の作品の録音もリリースします。このユリウス・ベルガー(Julius Berger, 1954-)を起用したヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)の無伴奏チェロ組曲全曲も、そうしたイレギュラーなリリースの一枚です。
ジャケットも瀧正徳の書を使い、CDケースもデザイン重視のちょっと変わったものを使用しています。

J.S.バッハは、アイゼナハの音楽一族の家に生まれたドイツの作曲家です。父ヨハン・アンブロシウス・バッハは、J.S.バッハが10歳の時に逝去し、以来1700年にリューネブルクの修道院の付属学校に入学するまで、オールドルフに住む兄ヨハン・クリストフ・バッハのところに身を寄せました。1703年にヴァイマルの宮廷楽団のヴァイオリン奏者となり、アルンシュタットの教会のオルガン奏者も兼任しました。1705年にはリューベックに休暇を利用して留学しディートリヒ・ブクステフーデにオルガン演奏を学びました。1706年にアルンシュタットに帰ったときには予定の休暇期間を超過していたために立場が悪くなり、ミュールハウゼンの教会オルガン奏者に転出しています。1708年にヴァイマルの宮廷楽団に戻り、楽師長にまで昇進しましたが、1717年にケーテンの宮廷楽長としてヘッドハンティングを受けたのが問題となり、ヴァイマル公により投獄されるという憂き目にあいました。結局ケーテンの宮廷楽長に収まりましたが、1720年代に入ってケーテンの宮廷が音楽の予算を減らしたため、1723年にライプツィヒの聖トーマス教会のカントルに転任しています。1736年にザクセンの宮廷楽長を兼務するようになりましたが、1749年に脳卒中を患っています。翌年にはかねてより患っていた眼病の治療のためにジョン・テイラーの手術を受けましたが、術後の後遺症で体力を消耗し、ライプツィヒで亡くなりました。

J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲は、自筆譜が失われているので正確な作曲年代が割り出せていません。しかし、この曲を献呈される程の腕前を持った特筆されるべき奏者として、ケーテンの宮廷楽師を務めていたクリスティアン・フェルディナント・アーベルが考えられることから、バッハがケーテンの宮廷楽長を務めていた1717年からの6年間の間に作曲されたのではないかと推測されています。
また、近年では、作曲家自身がヴァイオリンやヴィオラのように肩で支えて弾く小型用のチェロ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)での演奏を視野に入れて作曲したのではないかという説も唱えられるようになっています。

J.S.バッハが活躍した時代の組曲は、宮廷用ダンス・ミュージックの詰め合わせとしての意味を持っていました。J.S.バッハが作曲した無伴奏チェロ用の6曲の組曲も例外ではなく、それぞれに前奏曲を置きながら、アルマンド(中庸のテンポの2拍子または4拍子)、クーラント(やや早めの3拍子)、サラバンド(荘重な3拍子)、メヌエット(ゆったりとした3拍子)、ブレー(早いステップの2拍子)、ガヴォット(中庸のテンポの2拍子または4拍子)、ジグ(急速な8分の6拍子、8分の9拍子あるいは8分の12拍子)を取捨選択して組曲を構成しています。具体的には、前奏曲以下の舞曲としてアルマンド、クーラント、サラバンドとジグを順番に共通に採用し、サラバンドとジグの間に、第1組曲と第2組曲でメヌエット、第3組曲と第4組曲でブレー、後の組曲でガヴォットをそれぞれ挿入しています。
こうして舞曲集としての組曲の要件を満たしながら、J.S.バッハならではのポリフォニーを探求しているところに、この組曲集の独創性があります。

本CDでチェロを操るベルガーは、アウクスブルクに生まれ、ヴァルター・ライヒャルト、フリッツ・キスカルト、アントニオ・ヤニグロ、ザラ・ネルソヴァ、ムスティスラフ・ロストロポヴィチの各氏に師事した凄腕。演奏機会に恵まれない古曲から新作初演まで何でもこなします。この録音はベルガーにとって二度目の挑戦ということでグァダニーニ作のチェロ「エクス・ダヴィドフ」にガット弦を張り、第6組曲ではアムステルダムのヤン・ピーター・ラムボートが1700年に作ったとされる5弦のチェロ・ピッコロを誂えてJ.S.バッハの想定に近づこうとしています。
モダン楽器と古楽器の知見を折衷する形で、今日的なJ.S.バッハのこの曲の姿を問うところに、Wergo的な視点が感じられます。

ベルガーの演奏は、パブロ・カザルスから脈々と受け継がれてきた演奏スタイルを手中に収めた上で、敢えて形而上学的なアプローチから離れてエンタテイメントに徹しています。
組曲第1番のプレリュードやクーラントでは、テキパキと楽譜に書かれた音を実音化しながら、出てくる音に様々な表情をつけて楽しんでいます。サラバンドでは息の長い音楽にやや集中力が途絶え気味になりますが、メヌエットやジーグではわざと機械的なアクセントをつけて可笑しみを出しています。
しかし、このアクセントのつけ方が理にかなっているため、カザルスの演奏に慣れている間はトリッキーに聴こえるものの、慣れてみるとよく考えられた演奏であることが感得できます。

組曲第2番以降の演奏も同じことが言えるでしょう。感動的に演奏するよりは、曲から多彩な表情を引き出して楽しんでしまおうというスタンスが目立ちます。フレージングやアクセントのつけ方が大胆で、時々ロボット・ダンスを見ているかのような錯覚にとらわれます。テンポの遅いサラバンドでは、古楽器演奏のように音を切って演奏するのが裏目に出て散漫な印象になることもありますが、組曲第3番や組曲第5番のそれのように、従来の歌心とは違った顔を覗かせて新鮮に聴こえることもあります。
楽器を歌わせることより、リズミカルに演奏することを優先させるスタンスは、この第6番の組曲の演奏でも変わりません。楽器の音色がより鋭くなった分、ベルガーの攻めの姿勢が明確になりました。古楽器演奏ならではの繊細な表情付けはあまりありませんが、大胆なアクセントのつけ方で、この曲の新しい切り口を見出そうとするかのような意欲を示しています。

カザルスがバッハの威光を感じさせる演奏でこの曲の再評価に先鞭をつけ、カザルスの次の世代の人たちはカザルスの演奏スタイルをそれぞれに洗練させることで、この曲に新たな命を吹き込み続けていましたが、古楽器演奏の知見が広がったカザルスの孫の世代は、バッハの威光を知らしめるよりも、舞曲集としての組曲へというアプローチに変わってきているようです。
ベルガーの演奏は、そうした新世代の演奏の中でも、とりわけよくできた演奏だと思います。

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