1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈ | Elliott Carter: Clarinet Concerto |
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Michael Collins (Cl.)
London Sinfonietta / Oliver Knussen
London Sinfonietta / Oliver Knussen
(Rec. August 1998, Henry Wood Hall, London)
◈ | Elliott Carter: Symphonia "Sum Fluxae Pretium Spei" |
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BBC Symphony Orchestra / Oliver Knussen
(Rec. 1 April 1998, Maida Vale Stuidio, London)
2008年は、アメリカの作曲家エリオット・カーター(Elliott, Carter, 1908-)の生誕百年です。といっても、彼はアメリカ作曲界の長老としてまだ現役です。ニューヨークはマンハッタン生まれのカーターは、15歳の時にカーネギー・ホールでピエール・モントゥーの指揮するボストン交響楽団の演奏でイーゴリ・ストラヴィンスキーの《春の祭典》のアメリカ初演を聴いて感銘を受けて音楽家への道を志すようになりました。カーター家の保険屋だったチャールズ・アイヴズに才能を認められたカーターは、ハーヴァード大学でウォルター・ピストンやグスターヴ・ホルストの薫陶を受け、パリでナディア・ブーランジェの指導も受けています。20代の頃から作品を発表するようになりましたが、ストラヴィンスキーやサミュエル・バーバーの影響から始まって音列主義に走り、音列組織の組成理論であるピッチクラス・セットや拍子を漸進的に変化させていくリズミック・モジュレーションを駆使するようになりました。
このCDでは、1996年に作曲されたクラリネット協奏曲と、同時期に完成したシンフォニエッタを収録しています。
クラリネット協奏曲は、7つの楽章からなり、ベンジャミン・ブリテンの《青少年のための管弦楽入門》の様式をカーター流に援用したような作品です。
ただし、ブリテンがヘンリー・パーセルの《アブデラザール》のロンド主題を用いて変奏曲にしたのに対し、カーターは、主題と変奏という枠組みを放棄し、7つの楽章で、それぞれのオーケストラのセクションをクラリネットと競わせるという形で作曲しています。
第一の部分はピアノ、ハープや木琴といった音程のある打楽器とのコラボレーションに重点が置かれ、第二の部分は音程のない打楽器とクラリネットのコラボレーションを企図します。第三の部分では金管楽器が弱音器をつけてクラリネットと競演し、第四の部分では木管楽器群とクラリネットの合奏になります。
第五の部分では弦楽合奏の静謐なバックに支えられてクラリネットが瞑想的な音楽を奏で、第六の部分では弱音器を外した金管楽器とクラリネットが格闘します。最後の部分ではこれまでに出てきた楽器との総力戦ニなるのかと思いきや、オーケストラは断片的な響きをちりばめてクラリネットの独奏をデコレーションするだけに終始し、聴き手のクライマックスへの期待をはぐらかします。
「我は過ぎゆく希望の対価なり」というイギリスの詩人リチャード・クラショーの言葉を副題に添えたシンフォニアは、ミニマリズムに反旗を翻し、同じフレーズを反復させないという態度を一貫させた名作です。
3つの楽章からなり、一応急-緩-急の伝統的なテンポ設定にならっていますが、形式的にはとても自由に組み立てられています。脈動する生き物のように音の響きを厚くしたり薄くしたり、沈黙したかと思えばうねるように音が立ち上ったりと、その表情は変幻自在です。
クラリネット協奏曲で華麗で自由闊達なソロを聴かせるのは、マイケル・コリンズ(Michael Collins, 1962-)です。コリンズはロンドン出身のクラリネット奏者で、シア・キングとスタンリー・ドラッカーに師事し、16歳でBBCヤング・ミュージシャン・オブ・イヤーを受賞しました。18歳の頃から、この協奏曲で伴奏を務めるロンドン・シンフォニエッタ(London Sinfonietta)に所属しつつ、同時代の作品を得意とする名手として、数々の新作初演をこなしています。
指揮のオリヴァー・ナッセン(Oliver Knussen, 1952-)は、スコットランドのグラスゴーに生まれた作曲家兼指揮者です。ジョン・ランバートに作曲を学んだ他、アメリカに渡ってガンサー・シュラーにも弟子入りして指揮法を習得しました。
ロンドン・シンフォニエッタは、1968年にデヴィッド・アサートンによって組織された同時代作品の演奏を得意とする室内管弦楽団です。録音時はナッセンが音楽監督を務めていました。
シンフォニアはナッセンの指揮するBBC交響楽団(BBC Symphony Orchestra)の演奏ですが、このコンビで初演も行われています。BBC交響楽団は1930年にエイドリアン・ボールトを創立指揮者に立てて設立されたイギリス放送協会(BBC)の主要オーケストラです。
演奏について、クラリネット協奏曲におけるコリンズの独奏は、右も左もわからずとりあえず吹いているだけという演奏とは異なり、多彩に切り替わる音楽のニュアンスに機敏に反応しています。また、ロンドン・シンフォニエッタもナッセンの指揮の下でコリンズに負けない瞬発力の高いアンサンブルで曖昧さのない音楽を作り上げており、このオーケストラのメンバーたちの個々の技量とアンサンブル能力の高さゆえに、スリリングに聴くことができます。
シンフォニアは初演コンビでの録音だけあって、色気すら感じさせる弦楽器の音色、溌剌とした管楽器など、曲を完全に手中に収めています。BBC交響楽団はロンドン・シンフォニエッタ以上に豊かな音色を縦横無尽に駆使して、作品の要求する力感をうまく肉付けしています。協奏曲ともども生き生きとした生命の脈動を感じさせる演奏に仕上がっているのは、ナッセンのカーター作品への深い理解と共感があればこそなのでしょう。
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