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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Ludwig van Beethoven: Violin Concerto in D major, op.61
Erich Gruenberg (Vn)
New Philharmonia Orchestra / Jascha Horenstein
(Rec. 31 March 1967, Walthamstow Town Hall, London)
◈Robert Schumann: Piano Concerto in A minor, op.54
Malcolm Frager (Pf)
Royal Philharmonic Orchestra / Jascha Horenstein
(Rec. 2 February 1967, Walthamstow Town Hall, London)



ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)のニ長調のヴァイオリン協奏曲(1806年作)と、ロベルト・シューマン(Robert Schumann, 1810-1856)イ短調のピアノ協奏曲(1845年作)のカップリングです。

ベートーヴェンの本作は、彼が唯一完成まで漕ぎつけたヴァイオリン協奏曲です。ベートーヴェンが音楽監督を務めていたアン・デア・ウィーン劇場のオーケストラでコンサート・マスターを務めていたフランツ・クレメントを作曲に際してのアドバイザーに迎え、1806年12月23日にアン・デア・ウィーン劇場でクレメントの独奏と作曲者自身の指揮で初演されました。草稿の段階では、お世話になったクレメントに献呈するつもりだったようですが、1808年に出版した際には、献呈先がシュテファン・フォン・ブロイニングに変更されています。また、その年に結婚したブロイニング夫妻へのプレゼントとして、独奏ヴァイオリンのパートをピアノ用に編曲した楽譜も同時に出版し、ブロイニング夫人ユーリエに献呈されています。
ベートーヴェンのこの作品は、初演当初から好評だったわけではなく、初演の際にはベートーヴェンの作品よりも、クレメントの余興のほうに評価が集中したといわれています。その後、ニコロ・パガニーニがロンドンで取り上げたものの、あまり評価されず、アンリ・ヴュータンが綿密に研究してレパートリーに加え、さらに1844年にヨーゼフ・ヨアヒムがフェリックス・メンデルスゾーンの伴奏で演奏してから、ようやく名曲として評価されるようになりました。今日では、ヴァイオリニストのマエストロぶりを測る試金石とされています。

本CDは、エリック・グリューエンバーグ(Erich Gruenberg, 1924-)の独奏と、ヤッシャ・ホーレンシュタイン(Jascha Horenstein, 1898-1973)の指揮するニュー・フィルハーモニア管弦楽団の伴奏で収録されています。
グリューエンバーグは、エーリヒ・グリューエンベルクとしてウィーンに生まれたヴァイオリニストです。地元の音楽院で基礎教育を受けた後、1938年にイェルサレム音楽院に留学し、そのままイェルサレム放送協会のオーケストラのコンサート・マスターとしてキャリアをスタートさせています。しかし、1946年からロンドン王立音楽院のヴァイオリン科の教授だったマックス・ロスタルの下でさらなる研鑽を積み、1950年にはイギリスに帰化してエドマンド・ラッブラやウィリアム・プリースらとの室内楽を中心に演奏活動を展開するようになりました。一方でオーケストラ・プレイヤーとしての能力の高さを買われ、1956年から1958年までストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、1962年から1965年までロンドン交響楽団、1972年から1976年まで、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のコンサート・マスターを歴任し、ビートルズのセッション録音にも参加しています。
教育者としてもギルドホール音楽学校やロンドン王立音楽院などで教え、イェフディ・メニューイン国際ヴァイオリン・コンクールの審査員長を務めるなど、イギリスのヴァイオリン業界の重鎮と目されています。
指揮を務めるホーレンシュタインは、ウクライナ出身の指揮者です。ロシア革命を逃れて一家でプロイセンのケーニヒスベルクに移住し、さらに1911年にウィーンに移り住んで当地の音楽院でヨーゼフ・マルクスとフランツ・シュレーカーから音楽教育を受けました。1920年にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でヴィルヘルム・フルトヴェングラーの助手を務め、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のみならず、ウィーン交響楽団の指揮台にも上がって指揮者としての経験を積み、1928年にはデュッセルドルフ歌劇場の首席指揮者に栄転しました。翌年には同歌劇場の音楽総監督に抜擢され、ドイツでの名声を高めましたが、ナチスの台頭によって1933年に職権を剥奪され、1940年にアメリカに亡命して、アメリカの市民権を獲得しています。アントン・ブルックナーやグスタフ・マーラー等の大編成による作品を得意とし、またアルバン・ベルクやパウル・ヒンデミットといった同時代の作曲家の作品にも共感を示した名指揮者でしたが、戦後はフリーランスの立場でヨーロッパ各地のオーケストラに客演していました。

本録音における音楽上のイニシアチブはホーレンシュタインが握っており、グリューエンバーグの独奏は、ホーレンシュタインのスケールの大きな造形にすっぽりと収まっています。しかし、こうした順応は、仕方なく指揮者の芸風に付き合うような、消極的順応ではなく、オーケストラとの協調を自らの為すべきことと心得た積極的な順応といえます。そのため、ホーレンシュタインの芸風に同化しながらも、全く埋没することがありません。例えば、第2楽章の冒頭主題をオーケストラから引き継ぐ時の独奏の格調の高さには、ハッとさせられるような美しさがあります。この主題を独奏で変奏していく際にも、これ見よがしな演奏にならず、終始穏やかさを保っている辺りに、グリューエンバーグの独奏の見事さを聴くことが出来ると思います。

シューマンのピアノ協奏曲も、シューマンの完成した唯一のピアノ協奏曲として、コンサート・ピアニストの重要レパートリーに位置付けられています。シューマンの生きていた頃、協奏曲のジャンルは、ヴァイオリンやピアノなどの傑出した奏者たちが、持てる技巧を駆使して、自分たちのスター性を見せつける音楽として持て囃されていました。元々ピアニストに憧れながら、その夢を捨てざるを得なかったシューマンにとって、そうした従来のものよりも高い芸格を持つ協奏曲を書くことが、捨てなければならない夢を乗り越える術だったのかもしれません。この曲を完成するまで、3度にわたってピアノ協奏曲の創作を企図したシューマンでしたが、そのいずれも失敗に終わり、この協奏曲を完成させるのに、随分と慎重な姿勢で臨んでいます。まずは、1841年にピアノとオーケストラのための幻想曲として第1楽章の部分を書き上げましたが、後の楽章が完成するにふさわしい着想が得られるまで出版を据え置き、1845年に第1楽章の改訂も含めて一気に仕上げています。出来上がった作品は、親友のピアニストであったフェルディナント・ヒラーに捧げられましたが、完成した翌年の正月に、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスでお披露目された時には、作曲者の妻であるクララが独奏を務め、ヒラーは指揮に回ったということです。
その後、シューマンはピアノとオーケストラのための作品を書きましたが、いずれもピアノ協奏曲には発展せず、この曲が唯一のシューマンのピアン協奏曲の完成作となりました。

本CDでは、アメリカ出身の名ピアニスト、マルコム・フレージャー(Malcolm Frager, 1935-1991)が独奏を務めています。フレージャーは、シューマンの妻の門弟だったカール・フリードベルクに学んだピアニストで、1959年のレーヴェントリット国際音楽コンクールと翌年のエリザベト王妃国際音楽コンクールで優勝したという実績の持ち主です。この録音からほどなくして、フレージャーは、この曲の第1楽章の元となった幻想曲の自筆譜を発見し、音楽学的な功績も残しています。それだけ、フレージャーにとって思い入れの深い作品だったようです。音質的には、第1楽章の冒頭にマスター・テープの経年劣化からくるであろう音の撓みが確認できますが、フレージャーの鮮やかな演奏を堪能するには大きな支障はありません。ホーレンシュタインがロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を振ってつけた伴奏も、ずっしりと重みがあり、フレージャーの軽やかな演奏に厚みを持たせることに成功しています。ただ、この演奏には、出典の明らかではない独自解釈もあり、例えば第3楽章の終結部のピアノ独奏の両手をずらしながら終結になだれ込む部分のずらしがありません。

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