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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Max Bruch: Violin Concerto No.1 in G minor, op.26
◈Max Bruch: Scottish Fantasy, op.46
Arthur Grumiaux (Vn)
New Philharmonia Orchestra / Heinz Wallberg
(Rec. 20-23 September 1973, London)



アルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux, 1921-1986)のヴァイオリン独奏と、ハインツ・ヴァルベルク(Heinz Wallberg, 1923-2004)の指揮するニュー・フィルハーモニア管弦楽団の伴奏で、ドイツ人作曲家、マックス・ブルッフ(Max Bruch, 1865-1957)のヴァイオリン協奏曲第1番とスコットランド幻想曲を収録したアルバムです。
グリュミオーは、ブリュッセル音楽院でアルフレッド・デュボワの薫陶を受け、パリでジョルジェ・エネスクの薫陶を受けたベルギーのヴァイオリニストです。第二次世界大戦後の1945年から母校で教鞭をとり、弟子に豊田耕児、オーギュスタン・デュメイやステファニー・チェイスらがいます。本録音が行われた年には、ベルギー国王ボードゥアン1世から男爵の爵位を賜りました。
ヴァルベルクは、NHK交響楽団に度々客演し、「ハインツ・ワルベルク」として日本でも馴染みの深いドイツの指揮者です。ドルトムントとケルンの音楽大学でヴァイオリンとトランペットを学び、1948年にミュンスターやトリーアなどの歌劇場でコレペティトゥーアとして音楽活動を開始。その後、アウグスブルクやブレーメン、ヘッセンやエッセンといったドイツ各地の歌劇場の音楽監督を歴任し、さらにウィーン国立歌劇場の常連として客演を続けてオペラのスペシャリストとして名声を博するようになりました。

本CDで演奏されているブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番は、まずマンハイム歌劇場のコンサート・マスターを務めるヨハン・ナレット=ケーニヒに助言を仰ぎ、オットー・フォン・ケーニヒスロウの独奏と作曲者自身の指揮でコブレンツに於いて1866年4月22日に初演されました。初演は拍手喝采を受けましたが、ブルッフ自身は出来栄えに納得がいかず、ヨーゼフ・ヨアヒムに相談して1867年に現行版に改訂しています。この現行版はヨアヒムの独奏とカール・マルティン・ラインターラーの指揮で1868年1月5日にブレーメンに於いて初演されています。
スコットランド幻想曲は、正式には《スコットランド民謡の旋律を自由に用いた、管弦楽とハープを伴うヴァイオリンのための幻想曲》(Fantasie für Violine mit Orchester und Harfe unter freier Benützung Schottisher Volksmelodien)といい、1879年に着手された作品です。1880年にリヴァプール・フィルハーモニー協会の音楽監督に就任した時に完成させています。作品を完成するにあたって、ウォルター・スコットの著作に触発され、ロバート・バーンズとウィリアム・ジョンソンによって編纂された『スコットランド音楽博物誌』を参考にしています。ブルッフの赴任地であるリヴァプールでヨアヒムを招いて1881年2月22日に初演されました。しかし、この初演をブルッフ自身はあまり評価せず、リヴァプールでの任を勇退する1883年になってパブロ・デ・サラサーテが取り上げてから、作品の真価を知らしめた人としてサラサーテに作品を献呈することが決まりました。作品を気に入ったサラサーテは、同じ年にブレスラウでも再演し、その時には「ヴァイオリン協奏曲第3番」としてプログラムに載せています。(その後1890年にヴァイオリン協奏曲第3番が作曲されました。)
この曲は、序奏と4つの楽章からなり、オーケストラがイギリスの古城、物悲しいヴァイオリンの調べが、その城を見て過去の栄華に思いを馳せる老いた吟遊詩人の姿を象ります。ヴァイオリンが引き延ばす変ホ音を軸にして休みなく第1楽章に入り、《年老いたロブ・モリス》(Auld Rob Morris)というスコットランド民謡を基にした美しいメロディが編まれます。第2楽章では俄かに活気づき、《粉まみれの粉屋》(Dusty Miller)が主題として使われます。第3楽章は《ジョニーがいなくてがっかり》(I'm a Doun for Lack O'Johnnie)という民謡に合わせたロマンスになり、終楽章では《ウォレスと共に血を流したスコットランドの人々》(Scots wha hae Wallace bled)に基づく変奏曲でヴァイオリンが華麗な技巧を聴かせます。この《ウォレスと共に血を流したスコットランドの人々》は、バーンズが1783年にスコットランドの騎士のウィリアム・ウォレスにまつわる詞をつけて発表したもので、元々は《ヘイ・トゥッティ・タッティ》(Hey Tuttie Tattie)という古謡です。

演奏について、グリュミオーのヴァイオリン独奏は、朗々と美音を振りまくのではなく、まるで漆塗りの伝統工芸のような心の行き届いた芸風で聴かせます。凛としたその音色は、耽美的なブルッフの音楽に品格を与えています。ヴァイオリン協奏曲第1番では、ヴァルベルクの的確なサポートの下、第1楽章から情に流されないキリッとした表現で高潔な音楽に仕上げています。第2楽章も磨き抜かれたヴァイオリンの音色とヴァルベルクの絶妙な肉付けが程良い艶を生みだしていて、痩せすぎず太り過ぎない丁度良い演奏になっています。第3楽章は、思い切りの良く力強い演奏ですが、オーケストラともども力任せにならず、リズムの弾みをうまく利用して音楽の推進力を生みだしています。
ヴァイオリン協奏曲第1番が、グリュミオーにとって3回目の録音だったのに対し、スコットランド幻想曲は、この録音が唯一のチャレンジとなります。その結果は、あまり芳しいものではありません。序奏から第1楽章までの連結は、ヴァイオリン協奏曲第1番の第2楽章に共通する美しさがありますが、第2楽章や終楽章のような躍動的な部分では、何故か覇気が足りず、オーケストラの頑張りにもかかわらず低調な出来です。このため、甘い恋愛を思わせる第3楽章が緩くなってしまい、ヴァイオリン協奏曲第1番の演奏のような成功にはなっていません。この作品の世俗的なノリの良さにグリュミオーがあまり共感を寄せていないのかもしれません。

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