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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Ernest Chausson: Symphony in B flat major, op.20
Orchestre Symphonique et Lyrique de Nancy / Jérôme Kaltenbach
(Rec. 17-20 September 1996, Salle Poirel, Nancy)
◈Ernest Chausson: Poème, op.25
Laurent Korcia (Vn)
Orchestre Symphonique et Lyrique de Nancy / Jérôme Kaltenbach
(Rec. 17-20 September 1996, Salle Poirel, Nancy)
◈Ernest Chausson: Symphonic Poem "Viviane", op.5
Orchestre Symphonique et Lyrique de Nancy / Jérôme Kaltenbach
(Rec. 17-20 September 1996, Salle Poirel, Nancy)



ジェローム・カルタンバック(Jérôme Kaltenbach, 1946-)は1974年のブザンソン国際指揮者コンクールでシルヴァン・カンブルランと一位を分け合ったフランスの指揮者。パリ音楽院で学んだあと、イタリアに留学してフランコ・フェラーラに学んでいます。コンクール入賞後はフランス各地のオーケストラに客演し、1979年から1998年までロワール県にあるナンシー歌劇場の音楽監督を務めました。その後はリモージュの歌劇場の指揮者に転出しています。本CDで指揮しているオーケストラは、ナンシー歌劇場のオーケストラで、「ナンシー・リリック交響楽団」を名乗っています。ただ名称が分かりづらいということで、日本国内のディストリビューターはナンシー交響楽団として紹介しているようです。

本CDの演目は、エルネスト・ショーソン(Ernest Chausson, 1855-1899)の交響曲(1889-1890年作)と詩曲(1896年作)、そして交響詩《ヴィヴィアーヌ》(1882年作、1887年改訂)です。ショーソンは44歳で自転車事故の為に急逝し、完成した交響曲は、このCDに収録される一曲のみとなりました。1891年4月8日にサル・エラールで作曲者自身の指揮で初演されましたが、作品の真価が理解されたのは、1897年にアルトゥル・ニキシュがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のパリ公演で取り上げてからのことです。私淑していたセザール・フランクを見習って循環形式による三楽章構成の作品に仕上げましたが、フランクに比べて官能性の混じったドラマティックな作品になっています。
ショーソンの詩曲は、ベルギーのヴァイオリニストであるウジェーヌ・イザイの依頼で書かれたものでした。イザイはショーソンにヴァイオリン協奏曲の作曲を依頼しましたが、形式にとらわれないヴァイオリン曲なら書けると応じ、この曲が生み出されました。非公式の初演は作曲された年の秋頃と考えられています。スペインのシッチェスに来ていたイザイとショーソン夫妻が地元の画家であるサンティアゴ・ルシニョールのパーティーで試演したとのこと。シッチェスでの試演では3回も繰り返して演奏する程の好評を博しましたが、ギー・ロパルツの指揮とイザイのヴァイオリンで12月27日にニース音楽院で行われた公式の初演ではあまり評判にならず、翌年の4月4日に行われたパリで行われたコンセール・コロンヌの公演で漸く名作として認知されるようになりました。作品はイワン・ツルゲーネフの小説『勝ち誇れる愛の歌』を題材にし、作曲中は、その小説のタイトルをそのまま曲名に使う予定でしたが、聴き手の想像力を自由に掻き立てられるよう、出版に当たって現在の名前にしました。

《ヴィヴィアーヌ》は、記念すべきショーソン初の本格的オーケストラ曲として作られた作品。この曲が書かれるに当たって、ショーソンはリヒャルト・ヴァーグナーの《パルジファル》の初演を聴きにバイロイトに出かけ、その作品に発奮してこの曲を書き上げました。ヴァーグナーの作品にちなんでイギリス伝承のアーサー王の物語に着目したショーソンは、その後アーサー王の伝説に基づくオペラまで書き上げましたが、これはその端緒となった作品でもあります。表題の「ヴィヴィアーヌ」は、アーサー王が手にした名剣エクスカリバーの持ち主だった妖精のヴィヴィアンのことです。ここで描かれるのはヴィヴィアンとアーサー王の参謀だったマーリンの話。
ヴィヴィアンと知り合ったマーリンは、ヴィヴィアンに一目惚れし、自らの魔術の全てをヴィヴィアンに授けます。すると、ヴィヴィアンはマーリンと二人で暮らすためと称して城を作り、その城の中にマーリンを閉じ込めてしまいました。行方不明になったマーリンをアーサー王が探しにやってきますが、ヴィヴィアンの使った魔法により、アーサー王にはマーリンを見つけることができませんでした。
この作品は、ジャンヌ・エスキュディエに献呈されました。エスキュディエは、画家のピエール=オーギュスト・ルノワールの紹介でショーソンと知り合った人。作品は1883年3月31日に国民音楽協会の演奏会でエドゥアール・コロンヌの指揮で初演され、そのほぼ三ヶ月後にショーソンとエスキュディエは結婚しました。なお、新婚旅行の行先はバイロイトで、《パルジファル》を二人で聴きに行っています。また、1886年からアーサー王の物語でオペラを作り始めたショーソンは、1887年にこの曲の改訂を行い、1888年1月29日のシャルル・ラムルーの演奏会で再発表しました。今日演奏されるのは、この1887年の決定稿です。ヴァーグナーの作品に強く影響された作品だけに、ヴァーグナー流の動機の使い方をし、ハーモニーにもバイロイトで聴いたヴァーグナーの音楽を彷彿とさせるものがあります。それを抒情的な音楽に仕上げているのは、ヴィヴィアンを婚約者、マーリンを自分に見立てたショーソンの見識でしょうか。

カルタンバックの指揮するナンシー・リリック交響楽団の演奏は、ボロボロと崩れそうなアンサンブルの微妙なバランスに面白さがあります。交響曲では、第1楽章冒頭の凄みは不足するものの、主題展開の晴れやかさは爽やかな風が吹き込むようで、下手なオーケストラだと侮れない魅力を持っています。第3楽章のコーダに至るまで、曲のスケールを大きく膨らませるという点では芳しい成果は挙げられていませんが、自らの持てる力を精いっぱい使ったような充実感はあります。
詩曲では、ヴァイオリン独奏をローラン・コルシア(Laurent Korcia, 1964-)が担当しています。コルシアはパリ音楽院でミシェル・オークレールに学んだフランスのヴァイオリニストで、1983年ジェノヴァでのパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールの第2位(第1位なし)、1984年のロン=ティボー国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で第3位、1989年のフランチェスカッティ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝という実績を持っています。ここでの演奏は繊細にして丁寧。やや線が細いものの、ナンシー・リリック交響楽団の演奏を引き締める効果を発揮し、結果的に聴き応えのある名演奏に仕上げられています。
《ヴィヴィアーヌ》も、交響曲と同傾向の演奏ながら、やや作品の落とし所をオーケストラのほうがつかみきれていない風。ただ、とってつけたような人工臭がない分、オーケストラの純朴さが妙に心を安らかにする演奏でもあります。

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