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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Luciano Berio: Cinque variazioni
◈Luciano Berio: Rounds
◈Luciano Berio: Six Encores
◈Luciano Berio: Sequenza IV
◈Luciano Berio: Petit Suite
◈Luciano Berio: Sonata
Francesco Tristano Schlimé (Pf)
(Rec. February 2005, Carré Saint Vincent, Orléans)




フランチェスコ・トリスターノ・シュリメ(Francesco Tristano Schlimé, 1981-)は、ルクセンブルク出身のピアニスト。地元の音楽院やブリュッセル音楽院などを経てアメリカのジュリアード音楽院に留学し、ジェローム・ローウェンタール、ブルース・ブルベイカー、ジェイコブ・ラテイナーの各氏に師事していました。さらにはロザリン・テュレックやエミル・ナウモフらの薫陶も受けています。ミハイル・プレトニョフの知己を得て、2000年にはプレトニョフの指揮するロシア・ナショナル管弦楽団のバックアップでデビューを飾っています。2004年にはオレルアン国際20世紀ピアノ・コンクールを制覇していますが、コンクール優勝以前から新バッハ・プレイヤーズを結成して欧米各地を巡り、ピアニストとしての名声は確立しています。
また、他ジャンルとのコラボレーションにも意欲的で、ジャズ・ピアニストとして演奏したり、カール・クレイグやマーコフといったテクノ・アーティストと共演したり、電子楽器を使った作曲に手を染めたりしています。
本CDで聴くのは、イタリアの作曲家、ルチアーノ・ベリオ(Luciano Berio, 1925-2003)のピアノ作品集です。演目は以下の通り。
▤ 5つの変奏(1952-1953年作、1966年改訂)
▤ ラウンズ(1965年作)
▤ 6つのアンコール(1990年出版)
▤ セクエンツィアⅣ(1964年作)
▤ 小組曲(1947年作)
▤ ソナタ(2001年作)
この作品集の中でも成立時期の早い小組曲は、1948年にコモで初演され、ベリオが初めて出版した作品になったもの。曲は、〈前奏曲〉、〈小さなアリア1〉、〈ガヴォット〉、〈小さなアリア2〉、〈ジーグ〉という5曲からなり、古風な舞踏組曲の体裁を持っていますが、作風はセルゲイ・プロコフィエフやモーリス・ラヴェルの影響下にあり、ベリオの作曲家としてのルーツを知る便となります。
1952年から翌年にかけて作られた《5つの変奏》は、アントン・ウェーベルンの微小形式に倣った作品。主題こそ十二音音楽の作法で作られているものの、トータル・セリーの技法は用いず、従来的な性格小品としての変奏に徹しています。
《セクエンツィア Ⅳ》はジョシー・デ・カルヴァーリョによってセント・ルイスで1966年に初演された作品。セクエンツァはベリオのライフ・ワークとなった器楽(声楽も含む)のための作品集です。基本的に独奏者一人で、指定された楽器を使って表現の限界に挑戦するというコンセプトですが、楽器を改造したり、楽器の想定外の奏法(特殊奏法)を用いたりということは極力避けられています。このピアノの為のセクエンツァは、セリー音楽さながらの音が散りばめられていますが、その音の並びそのものよりも、その並べられた音を短く切って跳ねあげたり、長くのばして重ねたりといった表現の多様性を追求する作品です。ブライアン・ファーニホウやマイケル・フィニシーのような複雑な音楽ではありませんが、音の瞬間的な移ろいを的確に表現する瞬発力が演奏者には求められます。
《ラウンズ》は、元々チェンバロの為に作った作品で、マルチェロ・パンニに献呈されています。作曲から程なくしてピアノでも演奏できるように改訂され、1968年にジョエル・シュピーゲルマンの手でニューヨークで初演されました。拍節へのこだわりがなく、葡萄の房のように音を装飾的に付け加えていくその音楽は、ピエール・ブーレーズのピアノ・ソナタ第3番を想起させます。こうした音の密集と分散を気まぐれに繰り返す手法は、《セクエンツィア Ⅳ》でより深められることになります。
《6つのアンコール》は〈芽〉(Brin)、〈葉〉(Leaf)、〈水のピアノ〉(Wasserklavier)、〈地のピアノ〉(Erdenklavier)、〈大気のピアノ〉(Luftklavier)、〈火のピアノ〉(Feuerklavier)の6曲からなるショートピース集で、クロード・ドビュッシー風の抒情の感じられます。本CDには、これらの表題は書かれていませんが、先に書いたような曲順で収録されています。しかし、作曲年代はばらばらで、〈水のピアノ〉は1965年、〈地のピアノ〉は1969年、〈大気のピアノ〉と〈火のピアノ〉は1981年の作で、1990年に〈芽〉と〈葉〉が書き加えられて出版されました。
2001年に作曲されたピアノ・ソナタは、このCDが初録音とのこと。変ロ音に固執しながら自由にピアノのテクニックを花開かせるところは、まるでフランツ・リストのピアノ・ソナタのようです。思えば、ベリオは元々オルガニストの家系に生まれ、ピアニストとして教育を受けていた人でした。ただ、第二次世界大戦で徴兵され、軍隊で銃の暴発で右手を負傷したためにピアニストとしてのキャリアを断念し、作曲家として活動するようになったという経緯があります。ここではリストもかくやと思わせるほどの技巧を奏者に要求する一方で、リスト流の超絶技巧に安住するのではなく、ドビュッシー以降の20世紀の音楽シーンをパノラマのように描き出していきます。鍵盤楽器奏者の家系に生まれたベリオの血と作曲家としてのベリオの意地が交錯します。

シュリメの演奏はオレルアン国際20世紀ピアノ・コンクールの覇者らしく、《ラウンズ》や《セクエンツァ Ⅳ》での冷静沈着な演奏スタイルが聴き所。ともするとただの音価と強度の羅列に終わってしまう作品から詩的な表現を引き出そうとしています。初録音となるソナタでも、技巧的に限界に挑むのではなく、作品を自らの感性で捉えなおそうとする創造性の豊かさがあり、それなりの説得力のある演奏に仕上がっています。
出色の出来栄えを示しているのは《6つのアンコール》で、〈芽〉の音と音の間の間合いの取り方が絶妙で、このピアニストの腕前でドビュッシーの作品を聴いてみたい気にさせます。

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