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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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Carl Nielsen: Violin Concerto in D minor, op.33
Emil Telmányi (Vn.)
The Royal Danish Orchestra / Egisto Tango
(Rec. 3-7 June 1947)
Carl Nielsen: A Saga Dream, op.39
The Royal Danish Orchestra / Egisto Tango
(Rec. 2 February 1942)
Carl Nielsen: Clarinet Concerto, op.57
Louis Cahuzac (Cl.)
The Royal Danish Orchestra / John Frandsen
(Rec. 3-4 November 1947)




カール・ニールセン(Carl Nielsen, 1865-1931)はデンマークの作曲家。
フュン島のノーレ・リュンデルセの生まれで、アマチュア・ヴァイオリニストだった父に手ほどきを受けて6歳からヴァイオリンを始めました。14歳でオーデンセの軍楽隊に入隊してコルネットやホルンなどの管楽器に親しみましたが、18歳の時にヴァイオリニストになるべくコペンハーゲン音楽院のヴァイオリン科を受験して失敗しています。この時、当時デンマークを代表する作曲家だったニルス・ゲーゼに自分で作曲した作品を送り、ゲーゼの計らいで作曲科の学生としてコペンハーゲン音楽院に入学しました。在学中の1897年には合唱とオーケストラの為の《愛の賛歌》を作曲し、コペンハーゲン音楽協会の演奏会で自らの指揮で初演しています。卒業後の1899年にはコペンハーゲン王立歌劇場のヴァイオリン奏者として就職し、そこの楽長を務めていたヨハン・スヴェンセンに私淑しています。
1908年にスヴェンセンの後任として王立歌劇場の楽長に就任してからも、作曲家としてのニールセンはスヴェンセンの影響下にありましたが、第一次世界大戦の経験から、次第に作風を無骨で晦渋な方向へと変わり始め、1920年代には全く独自の境地へと至っています。

本CDに収録されているヴァイオリン協奏曲は、1911年に作られた作品。この頃のニールセンは3曲の交響曲を発表して作曲家としての名声を確立していました。
この曲が作られるきっかけになったのは、デンマーク出身のヴァイオリニスト、ペデル・メラーがパリから帰還したことが挙げられます。かねてよりヴァイオリン協奏曲の要望を受けていたニールセンは、これ幸いと1911年の夏に作曲に着手しています。作曲に集中するために、エドヴァルト・グリーグの家を訪問し、グリーグの使っていた作曲小屋を借りて作品を書き上げました。
初演はコペンハーゲン音楽協会の演奏会場として知られるオッド・フェローズ・マンションのホールで行われ、メラーが独奏を務めました。この時の伴奏は、作曲者自身が手兵のコペンハーゲン王立歌劇場のーケストラを振っています。
曲は従来の3楽章構成とは異なり、2つの部分に分けられています。第一部は、「ラルゴ」と指定され、「前奏曲」と名付けられた前半と、「アレグロ・カヴァレスコ」(騎士的なアレグロ)と指定された後半部分からなります。後半は前半の物々しさを引き継ぎ、重厚で誇らしげな音楽が展開されます。
第二部は、前半が緩徐楽章的な役割を果たし、後半が本来の3楽章制協奏曲の終楽章としてのロンドになっています。全体の構成を見れば、長めの前奏つきの3楽章構成と取ることもできますが、敢えて伝統的な3楽章構成と距離を取ったところに、ニールセンのオリジナリティへのこだわりが感じられます。

本CDでこの曲を演奏するのは、エミール・テルマーニ(Emil Telmányi, 1890-1988)と、エギスト・タンゴ(Egisto Tango, 1873-1951)の指揮するデンマーク王立管弦楽団(The Royal Danish Orchestra)です。
テルマーニは、ニールセンの娘アンネ・マリーと結婚してデンマークで活動するようになったヴァイオリン奏者で、ハンガリーはアラドの生まれです。ブダペスト音楽院でイェネー・フバイに学び、1911年にベルリンでデビューしています。ニールセンの娘と結婚したのは1918年(離婚は1933年)で、その翌年からデンマークを中心に指揮活動も開始し、デンマーク音楽界の名士となりました。コペンハーゲン近郊のホルテで亡くなっています。
タンゴはイタリアのローマに生まれ、コペンハーゲンで没した指揮者。ナポリ音楽院で学び、1895年にヴェネツィアのリド劇場で指揮者デビューを果たしています。1897年にはピエトロ・マスカーニと親交を結んでミラノ・スカラ座のアシスタントとして実績を積み、ウンベルト・ジョルダーノの《アンドレア・シェニエ》のアメリカ公演を成功させて指揮者としての名声を確立しました。1903年にはベルリン・コーミッシェ・オーパーの指揮者陣に加わり、1910年にはメトロポリタン歌劇場で指揮をしています。1911年にフェニーチェ座の指揮者を務めた後、1912年から1919年までハンガリー国立歌劇場の音楽監督を務め、ベーラ・バルトークの《木製の王子》や《青ひげ公の城》を初演しています。1927年からコペンハーゲン王立歌劇場に客演するようになったタンゴは、1930年から1946年まで王立歌劇場の首席指揮者をヨハン・ヒュエ=クヌートセンと共同で務め、そのままデンマークに帰化しました。
デンマーク王立管弦楽団は、1448年に設立されたデンマーク王クリスチャン1世のトランペット隊を起源とするデンマーク王室御用達のオーケストラです。コペンハーゲン王立歌劇場の専属オーケストラでもあり、デンマーク国内では「王室のシャペル」(Det Kongelige Kapel)と呼んでいます。

テルマーニは、義父だった作曲者自身の指揮でこの曲を演奏したことがあり、この録音は作曲者直伝の解釈をきくという点でも重要な録音です。また、往年の名ヴァイオリニストだったテルマーニの至芸を味わうという点でも、充分聴き応えのあるものです。
繊細なヴィブラートをかけて、一音一音丁寧に奏でていくテルマーニの独奏は、まるで魔法をかけているかのような陶酔感があります。第一部の前半と後半のつなぎの部分など、思わず息を呑む美しさで、ステンドグラスの光を浴びているようですらあります。
タンゴの伴奏は、テルマーニの独奏の「柔」に対して、ニールセン本来の「剛」を思わせます。しかし、テルマーニの呼吸にはぴったり合わせており、第二部前半では、テルマーニと共に抒情的表現に努めています。最後の諧謔的なロンドでは、オーケストラからスケールの大きな響きを引き出しており、テルマーニ共々品を失わない演奏を披露しています。

ヴァイオリン協奏曲の後に収録されているのは、ニールセンが1908年ごろに作曲した《サガの夢(夢の古譚)》です。サガというのは、中世アイスランドの古譚群のことですが、ニールセンは、そのサガの中から『ニャールのサガ』を読み、その中から印象に残った場面を音楽化しました。ニールセンが音楽化したのは、物語の登場人物である英雄のグンナーが二人の弟と船旅に出た時に、船の中で予知夢(敵の待ち伏せに遭い、弟を亡くす夢)を見る場面です。
作曲した年の4月6日には、ヴァイオリン協奏曲を初演した所と同じ会場で作曲者自身のタクトで初演されています。

この《サガの夢》を、本CDでは、タンゴがデンマーク王立管弦楽団を振って録音しています。元々オペラ指揮者として名声を博していた人だけに、聴き手を作品世界に引き込むのがうまく、海原の波や夢のまどろみなど、ただの音の羅列に終わらせず、細かなニュアンスをつけて情景としての描き出そうという努力が感じられます。録音の古さがネックですが、存外聴き応えのある演奏でした。

最後に収録されているクラリネット協奏曲は、1928年に作られた作品。
晩年のニールセンは、コペンハーゲン王立歌劇場のオーケストラ―つまりデンマーク王立管弦楽団―の木管セクションの首席奏者たちで作ったコペンハーゲン木管五重奏団の演奏を知り、彼らと親交を結んでいました。最初は彼らの為の曲を書いて献呈したのですが、彼らの担当楽器(フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルン)の一つ一つに協奏曲を書いて献呈する計画を思いつきました。
この計画で最初に着手されたのはフルート協奏曲で、1926年に書き上げられ、上記五重奏団メンバーのホルゲル・ジルベルト=イェスペルセンに捧げられました。
本CDに収録されているクラリネット協奏曲は、その第2弾に当たります。
この曲は、管・打楽器が大きく刈り込まれ、弦楽合奏の他に、ファゴットとホルンが2本ずつ、スネア・ドラムが1張だけという、変則的で簡素な編成を取っています。完成した年の9月14日のカール・ヨハン・ミヒャエルセンの夏の別荘での試演と同年10月2日のコペンハーゲンでの初演は、テルマーニがデンマーク王立管弦楽団のタクトを取りましたが、その時に要した団員数は、わずか22名だったとのこと。
独奏クラリネットのパートも難易度が高く設定されていて、試演と初演で独奏を務めた被献呈者のオーエ・オクセンヴァドは「こんな曲を作るんだから、ニールセンはよっぽどクラリネットが上手いんだろう」と皮肉をこぼしたのだとか。
コペンハーゲンで行われた初演では評価が真っ二つに割れ、地元の新聞では「クラリネットに宿る野生的な魂を解き放った」と、オクセンヴァドの演奏込みで好意的に書かれたものの、ヴィルヘルム・ペッテション=ベリエルなどの評論家筋は独奏パートを「高笑いし、喚き、さえずり、苦しんでのた打ち回る」と評し、不快感を表明しています。
フルート協奏曲が2楽章構成だったのに対し、この曲は楽章分けがなされておらず、およそ30分ほど独奏クラリネットが吹きまくります。便宜上は「アレグレット・ウン・ポーコ」の主題提示的序奏部、抒情的な「ポコ・アダージョ」の部分、諧謔的な「アレグロ・ノン・トロッポ」の部分と「アレグロ・ヴィヴァーチェ」のフィナーレという4つの部分に分けられますが、多様な要素が入り組んでテンポや雰囲気がコロコロ変わります。ファゴットつきの弦楽合奏と独奏クラリネットの間で取り交わされる素朴な冒頭主題を自由自在に活用しており、波乱万丈の作曲者自身の人生をこの曲に凝縮していると理解すれば、殊のほか共感的に聴くことができると思います。
この曲を書き上げた後、ニールセンの体調は衰えていき、残る3つの協奏曲を書く計画が遂行されないまま、コペンハーゲンの自宅で宿痾の心臓病のために亡くなっています。

1940年代に入って、この曲は初演者のオクセンヴァドの独奏で初録音が行われることになりましたが、オクセンヴァドの急逝のために一旦計画が頓挫しています。
その後、1947年にルイ・カユザック(Louis Kahuzac, 1880-1960)が演奏旅行のためにスウェーデンに立ち寄った時、亡くなったオクセンヴァドの代わりに初録音の独奏を務め、本CDに収録された録音が残されることとなりました。
この録音の伴奏は、ヨン・フランセン(John Frandsen, 1918-1996)の指揮するデンマーク王立管弦楽団が担当します。
カユザックはラングドック=ルシヨン地方のカランテという村に生まれ、バニェール=ド=ルションで亡くなったフランスのクラリネット奏者です。
トゥールーズ音楽院で、フェリックス・ペジェにクラリネットを習ったカユザックは、その後パリ音楽院でシリル・ローズの薫陶を受け、1899年にプルミエ・プリを得て卒業しています。1901年にはパリ・オペラ座のクラリネット奏者となる傍らでコンセール・コロンヌなど、フランスの主要コンサートのオーケストラに参加しました。1920年にはボストン交響楽団から首席奏者就任の依頼が舞い込みましたが、それに応じず独奏者として活動するようになりました。並行してパリ音楽院でも後進の指導に当たり、ヨナ・エッティンガー、ジェルヴェーズ・ド・ペイエやエドゥアルド・ブルンナーなど、多くの名手がカユザックの教えを受けています。
フランセンは、コペンハーゲンに生まれたデンマークの指揮者。デンマーク王立音楽院でオルガニストとしての研鑽を積み、1938年から1953年までコペンハーゲン大聖堂のオルガニストとして活躍しましたが、1945年にデンマーク放送交響楽団の指揮者としてデビューしています。1946年にはタンゴの後任としてコペンハーゲン王立歌劇場の首席指揮者に就任し、1980年まで務めました。その後はコペンハーゲンで亡くなるまでデンマーク放送の音楽顧問を務めながら王立歌劇場への客演を続けていました。

本録音時のカユザックは、既に60代の後半でしたが、年齢を感じさせない見事な演奏を聴かせます。
その飄々とし佇まいは、技術的な話を飛び越え、何もかも達観したような軽さがあります。
フランセンの指揮するデンマーク王立管弦楽団の伴奏は、逆に絶望の淵から薄笑いを浮かべるような、一筋縄ではいかない独特の雰囲気を湛えており、作曲者の真意を抉るかのような迫力があります。
しかし、カユザックの軽妙さとフランセンの深刻さは、お互いに何の関係も持たない並行関係として成立しているわけではなく、フランセンの伴奏の陰影が濃くなればなるほど、カユザックの超然とした演奏が映え、またカユザックの演奏のつかみどころのなさが極まるほど、フランセンの伴奏に味わいが増します。お互いがそれぞれのキャラクターを相殺し合うのではなく、興趣を深めあっているところが実に愉快です。

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