忍者ブログ
1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
[482]  [481]  [480]  [479]  [478]  [477]  [476]  [475]  [474]  [473]  [472
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


◈Giuseppe Tartini (arr. Fritz Kreisler): Violin Sonata in G minor "Trillo del Diavolo"
◈Fritz Kreisler: Preludium and Allegro in the style of Gaetano Pugnani
◈Henryk Wieniawski: Scherzo-Tarantella, op.16
◈Pablo de Sarasate: Zigeunerweizen, op.20
◈Johannes Brahms (arr. Fritz Kreisler): Hungarian Dance No.17
◈Niccolò Paganini: Fantasia on G string (Moses phantasie)
◈William Kroll: Banjo and Fiddle
◈Maurice Ravel: Pièce en forme de habanera
Ida Haendel (Vn)
Alfred Horeček (Pf)
(Rec. 10 & 11 May 1962, Domovina Studio, Prague)
◈Igor Stravinsky: Divertiment
Ida Haendel (Vn)
Alfred Horeček (Pf)
(Rec. 24 October 1957, Domovina Studio, Prague)



ポーランドのヴァイオリニストであるイダ・ヘンデル(Ida Haendel, 1928-)が、チェコのピアニストであるアルフレート・ホレチェク(Alfred Horeček, 1928-)と組んで録音したアンコール集です。
ヘンデルは、ワルシャワ音楽院で、ミエチスワフ・ミハロヴィッチに学び、さらにカール・フレッシュやジョルジェ・エネスコの薫陶を受けた人です。1935年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで第7位に入賞し、一躍脚光を浴びた彼女は、このコンクールで第1位を獲得したジネット・ヌヴーとともに、天才少女として脚光を浴びる存在になりました。
ヴァイオリニストとして、長いキャリアを誇るヘンデルですが、録音にはあまり積極的ではなく、このCDは、全盛期の彼女の腕前を知る恰好の録音としてよく知られています。

本CDで最初に演奏しているのは、ジュゼッペ・タルティーニ(Giuseppe Tartini, 1692-1770)のト短調のヴァイオリン・ソナタです。作曲者が語ったところによると、ヴァイオリニストだった彼の夢に悪魔が登場し、魂の契約と引き換えにヴァイオリンで悪魔が自分の曲をヴァイオリンで弾いて聴かせました。飛び起きた作曲者は、すぐさま今聴いた曲を書きとめたものの、悪魔の弾いた曲には及ばなかったとのことです。それで「悪魔のトリル」というニックネームで呼ばれているのだとか。

次に演奏しているのは、フリッツ・クライスラー(Fritz Kreisler, 1875-1962)の《前奏曲とアレグロ》です。クライスラーは、タルティーニの《悪魔のトリル》のソナタを校訂したり、ヴァイオリンで演奏したら演奏効果の上がりそうな曲に目をつけて編曲したり、自分で演奏するためのの曲を作ったりして、ヴァイオリンの演目の拡張に大きな功績を残しましたが、時には他人の名前を拝借して曲を作るというイタズラもしています。
この《前奏曲とアレグロ》は、そうしたイタズラの一環で、ガエターノ・プニャーニ(Gaetano Pugnani, 1731-1798)の名前を借用して発表していた作品です。

ヘンリク・ヴィエニャフスキ(Henryk Wieniawski, 1875-1962)は、ポーランド出身のヴァイオリニストで、フランスやロシアで活躍し、一頃ファースト・ネームをアンリ(Henri)にしていたことがあります。ポーランドでは、フレデリック・ショパンに並ぶ音楽的英雄とされ、ヘンデルが7位入賞したコンクールは、彼を顕彰するために開かれたコンクールの第1回目に当たります。スケルツォ・タランテラは、ヴィエニャフスキの作品の中ではとりわけ知られたもので、1850年代の初めごろに作られ、1856年に出版されました。ピアノと同じパッセージをヴァイオリンに何食わぬ顔で要求する難曲として知られ、サーカス芸のようなテクニックがちりばめられています。

パブロ・デ・サラサーテ(Pablo de Sarasate, 1844-1904)は、スペイン出身のヴァイオリニスト。作曲者としての彼は、オペラのパラフレーズ等を中心にかなりの作品を残していますが、《ツィゴイネルワイゼン》は、ロマ民族のメロディやスタイルを参考にして作曲され、サラサーテの名刺代わりのような曲になりました。前半部分は特にいろんなところで活用されていますが、豪華絢爛な後半部分は、かのフランツ・リストがハンガリー狂詩曲で使ったメロディが使われています。

ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms, 1833-1897)はドイツの作曲家ですが、生前の彼の作品で最も売れた作品は、21曲からなるハンガリー舞曲集でした。演奏者たちが、適宜自分で演奏できるように編曲して様々な形で流布しましたが、本CDに収録した第17番の舞曲は、クライスラーが編曲したものを演奏者のヘンデルが手を加えたバージョンで演奏されているとのことです。

ニコロ・パガニーニ(Niccolò Paganini, 1782-1840)は、イタリアのヴァイオリニストで、超絶技巧でヨーロッパ中の大スターになった人でした。優れたヴァイオリニストだった彼は、自前でも曲を書き、本CDに収録されたモーゼ幻想曲は、ヴァイオリンのG線(一番音の低い線)だけで演奏するという曲芸のための作品です。
主題は、ジョアキーノ・ロッシーニの歌劇《モーゼ》から採られています。
元々オーケストラ伴奏で演奏される曲でしたが、伴奏の簡素さからピアノで伴奏されることのほうが多いようです。
また、ヴァイオリンの代わりにチェロやコントラバスで演奏されることも少なくありません。

《バンジョーとヴァイオリン》は、アメリカ人作曲家のウィリアム・クロール(William Kroll, 1901-1980)の作品。
ヴァイオリニストだったクロールは、アメリカ南部でよく弾かれていた民族楽器のバンジョーとフィドル(ポピュラー音楽のヴァイオリン)の合奏を模した曲を仕上げました。元々ヴァイオリニストだったクロールだけあって、ピッツィカートの使い方やメロディの歌わせ方など、ヴァイオリンの特性を十二分に生かしており、ヴァイオリニストの間では特に評判の高いアンコール・ピースとして愛用されています。

モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)の《ハバネラ形式の小品》は、元々バス用のヴォカリーズとして作曲されたもの。いわゆる声楽用のエチュードの一環として作られた作品でしたが、その作品の美しさから、様々な楽器に転用されて演奏されています。無論ヴァイオリン用のレパートリーとしてもすでに定着しており、数多くのヴァイオリニストが、自分のレパートリーに組み入れています。

本CDの最後に収録されているのは、イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1892-1971)のディベルティメント(1934年)です。この曲は、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーへのオマージュとして作った《妖精の口づけ》が元ネタです。
ストラヴィンスキーは、あまり弦楽器が好きではなかったらしく、特にヴァイオリニストという職業を軽蔑していたそうですが、ポーランド出身のサミュエル・ドゥシュキンのことは気に入っていたようです。ヴァイオリン協奏曲作曲の際にストラヴィンスキーはドゥシュキンと知り合い、ドゥシュキンと共演するためにヴァイオリンとピアノのための作品を発表しました。
このディヴェルティメントは、《妖精の口づけ》から抜粋した組曲としてオーケストラ曲という形で完成されましたが、ドゥシュキンとの演奏用に、作曲者自ら再編曲し、ピアノとヴァイオリンのための作品として生まれ変わりました。
なお、本CDでは、このディヴェルティメントだけがモノラル録音で収録されていますが、ステレオ録音とはそん色のない音質に仕上がっており、むしろステレオ録音より生々しい音で録られています。

ヘンデルとホレチェクの演奏は、まるで常設のデュオのように息がぴったり合い、そう簡単には非を打たせない出来に仕上がっています。
タルティーニの《悪魔のトリル》は、作品のおどろおどろしいエピソードを追いかけるようなことはせず、音楽の造形美を冷静に掘り起こしています。
クライスラーの《前奏曲とアレグロ》でも、粘りのある音色でじっくりと練り上げ、決然とした演奏姿勢で彫りの深い表現を実現しています。
特に感心させられるのは、ラヴェルのハバネラ形式の小品で、ホレチェクの絶妙なテンポの揺らぎを受けて、ヘンデルが蠱惑的な音色と絶妙な間合いで、陶然とした雰囲気を作り上げています。
ストラヴィンスキーのディヴェルティメントにしても、作品からにじみ出るアイロニーをうまく掬い上げており、ストラヴィンスキーの人となりにまで思いを馳せられるような演奏内容になっています。

どのトラックも、どれ一つとして一本調子な演奏はなく、とても内容の濃いアルバムと言えるでしょう。
これと同水準、あるいはそれ以上のアンコール・ピースのアルバムを作るのは、今日の名手をもってしても、そうそう簡単にはできないと思います。

PR
Comment
name 
title 
color 
mail 
URL
comment 
pass    Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
Clock
ブログ内検索
カウンター
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
(´π`)
性別:
男性
自己紹介:
・・・。
最新CM
[06/29 (^▽^)]
[06/16 ある晩のヴぇる君。]
[06/07 はじめまして]
[05/30 ある晩のヴぇる君。]
[05/29 ある晩のヴぇる君。]
最新TB
Ranking




にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村
バーコード
試用品
Flag Counter
美的ブログパーツ
地球儀もどき
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]